祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
燃えるような太陽がゆっくりと西へ沈み、世界を茜色に染め上げていた。初めて見る城の敷地は思ったよりもずっと広い。
季節柄やや寂しい色合いをしているが、それでも庭師が丁寧に作業しているのだろう。見事な庭園を一望することができ、リラの心は躍った。
こんなに世界は広かったんだ、と自分の生きていた環境では知ることのできない光景だった。
城の大きな門の外には同じような茶色い屋根の建物が並んでいる。この前、少しだけ城の外に連れ出してもらったが、あれはどの辺だったのだろうか。
風がリラの長い髪を靡かせ、夕日を浴びて銀ではなく金色に輝かせている。夢中になっているところで、ふと背後に気配を感じた。急いで後ろを振り返れば、ひとりの男がそこには立っていた。
歩く死者――間違いない。金髪の髪を後ろでくくり、背が高く、身なりから高貴な身分なのは間違いないだろう。
だが、血の気がまったく感じられない顔からは、表情を読むこともできず、ただ不気味でしかなかった。
そしてゆっくりと男が静かにリラの方に近づいてくる。リラはとっさに身構えるも、深呼吸をして心を落ち着かせてから、男に問いかけようとした。そのときだ、どこからともなく音楽が聞こえてくる。
恐らく広間で舞踏会のために演奏する曲を練習し始めたのだろう。三拍子のゆったりとした美しい音色が耳に届く。そちらに気を取られたが、すぐに男の方に視線を戻す。すると、男は予想外の行動をとっていた。
左掌を上に向け、無表情のままリラに差し出している。リラは目を見張った。これがなにを意味するのか、この状況から考えられることはひとつだ。しかし、こんな展開はフィーネからは聞いていない。
どうするべきか、男は手を差し出したままだ。躊躇いながらも、リラはおずおずと男の手に自分の右手を重ねた。その瞬間、リラの意識は飛んだ。
季節柄やや寂しい色合いをしているが、それでも庭師が丁寧に作業しているのだろう。見事な庭園を一望することができ、リラの心は躍った。
こんなに世界は広かったんだ、と自分の生きていた環境では知ることのできない光景だった。
城の大きな門の外には同じような茶色い屋根の建物が並んでいる。この前、少しだけ城の外に連れ出してもらったが、あれはどの辺だったのだろうか。
風がリラの長い髪を靡かせ、夕日を浴びて銀ではなく金色に輝かせている。夢中になっているところで、ふと背後に気配を感じた。急いで後ろを振り返れば、ひとりの男がそこには立っていた。
歩く死者――間違いない。金髪の髪を後ろでくくり、背が高く、身なりから高貴な身分なのは間違いないだろう。
だが、血の気がまったく感じられない顔からは、表情を読むこともできず、ただ不気味でしかなかった。
そしてゆっくりと男が静かにリラの方に近づいてくる。リラはとっさに身構えるも、深呼吸をして心を落ち着かせてから、男に問いかけようとした。そのときだ、どこからともなく音楽が聞こえてくる。
恐らく広間で舞踏会のために演奏する曲を練習し始めたのだろう。三拍子のゆったりとした美しい音色が耳に届く。そちらに気を取られたが、すぐに男の方に視線を戻す。すると、男は予想外の行動をとっていた。
左掌を上に向け、無表情のままリラに差し出している。リラは目を見張った。これがなにを意味するのか、この状況から考えられることはひとつだ。しかし、こんな展開はフィーネからは聞いていない。
どうするべきか、男は手を差し出したままだ。躊躇いながらも、リラはおずおずと男の手に自分の右手を重ねた。その瞬間、リラの意識は飛んだ。