祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「私は反対です! さっきは触れただけで倒れたんですよ? 心臓が止まるかと思いました。それなのに、歩く死者と接触するなんて危険です! またリラさまになにかあったら、と思うと、私は……」
フィーネの声が詰まる。そんなフィーネにリラは謝罪の言葉を口にした。自分のことを心配されることが、こんなにも申し訳ない気持ちになるなんてリラは知らなかった。フィーネの矛先は続いてエルマーに向けられる。
「今までだって害はないんです。いいじゃないですか、陛下は滅多に舞踏会を開くこともありませんし、今まで通りあそこは、立ち入り禁止にしておけば」
エルマーはフィーネを軽く一瞥してから、リラに顔を向けた。
「フィーネの言うことも一理あります。あなたにそんな危険なことをさせるわけにもいかない。ましてや、そんな危険を冒しても、彼が光の方へ行くという確信もあるわけじゃない」
エルマーの言い分はもっともでリラは唇を噛みしめた。一瞬の沈黙が辺りを包み、紅茶の湯気がいい香りを伴って上に昇る。
「ですが……」
重い口を開いたのはエルマーだった。その顔にふたつの視線が集まる。
「まったく試す価値がないのかと言われれば、それも断言できませんが」
困ったような笑みを浮かべたエルマーは、とにかく陛下報告しましょう、我々だけでは判断できないと、もっともなことで締めくくり、この話は他言無用となった。
フィーネの声が詰まる。そんなフィーネにリラは謝罪の言葉を口にした。自分のことを心配されることが、こんなにも申し訳ない気持ちになるなんてリラは知らなかった。フィーネの矛先は続いてエルマーに向けられる。
「今までだって害はないんです。いいじゃないですか、陛下は滅多に舞踏会を開くこともありませんし、今まで通りあそこは、立ち入り禁止にしておけば」
エルマーはフィーネを軽く一瞥してから、リラに顔を向けた。
「フィーネの言うことも一理あります。あなたにそんな危険なことをさせるわけにもいかない。ましてや、そんな危険を冒しても、彼が光の方へ行くという確信もあるわけじゃない」
エルマーの言い分はもっともでリラは唇を噛みしめた。一瞬の沈黙が辺りを包み、紅茶の湯気がいい香りを伴って上に昇る。
「ですが……」
重い口を開いたのはエルマーだった。その顔にふたつの視線が集まる。
「まったく試す価値がないのかと言われれば、それも断言できませんが」
困ったような笑みを浮かべたエルマーは、とにかく陛下報告しましょう、我々だけでは判断できないと、もっともなことで締めくくり、この話は他言無用となった。