祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「っ、なに?」
「ご心配、ありがとうございます。ですが、私は舞踏会に参加するつもりも、邪魔するつもりもありませんから、どうかご安心ください」
深々と頭を下げるリラから飛び出した言葉に、彼女たちは虚を衝かれたような表情を見せた。そしてリラはフィーネを促して、すぐそばにある自室のドアを開けて中に入る。
「なんですか、あれ……」
ばたん、とドアが閉まった途端、怒りに震えた声が漏れた。そんなフィーネをリラは苦笑しながら宥める。
「しょうがないよ。事実、私みたいな人間が舞踏会なんかに参加したら、彼女たちの言うこと間違いなしだろうし」
「だからって! リラさまは陛下の、いえ、この城の者たちのためにも、わざわざ歩く死者に接触しようとしているのに……って、なんで笑うんですか!?」
ごめん、ごめん、と言いながらもリラの口元は笑みが浮かんでいた。リラにとってはあれくらいのことは言われなれている。
自分は言われてもしょうがない人間だ。だから、彼女たちのことはあまり気にならない。それよりも、こうして自分のことのように怒ってくれるフィーネについつい嬉しくなってしまう。
「ありがとう、フィーネ。あなたがいてくれて本当によかった」
本心でそう告げると、怒っていたフィーネの顔は違う意味で赤くなった。
「そんな、お礼を言われるようなことはしていませんよ」
照れているのだろう。それを誤魔化すかのように、リラの服を脱がそうと、自分の仕事を進める。そんなフィーネに気づかれないようにリラはこっそりとため息をついた。
舞踏会があるから、と思っていたが、ヴィルヘルムがもうずっと自分の元を訪れないのは、後宮やどこかの貴族の令嬢に会いに行っているかららしい。世継ぎを望まれている立場なのだから、それは喜ばしいことで、王としては当然の務めだ。
分かっているはずなのに、ましてや自分だけ、なんて望むのはとんでもないことだ。頭では分かっているのに心は勝手に痛んで苦しくなる。再びつくため息にはやるせなさも込められていた。
「ご心配、ありがとうございます。ですが、私は舞踏会に参加するつもりも、邪魔するつもりもありませんから、どうかご安心ください」
深々と頭を下げるリラから飛び出した言葉に、彼女たちは虚を衝かれたような表情を見せた。そしてリラはフィーネを促して、すぐそばにある自室のドアを開けて中に入る。
「なんですか、あれ……」
ばたん、とドアが閉まった途端、怒りに震えた声が漏れた。そんなフィーネをリラは苦笑しながら宥める。
「しょうがないよ。事実、私みたいな人間が舞踏会なんかに参加したら、彼女たちの言うこと間違いなしだろうし」
「だからって! リラさまは陛下の、いえ、この城の者たちのためにも、わざわざ歩く死者に接触しようとしているのに……って、なんで笑うんですか!?」
ごめん、ごめん、と言いながらもリラの口元は笑みが浮かんでいた。リラにとってはあれくらいのことは言われなれている。
自分は言われてもしょうがない人間だ。だから、彼女たちのことはあまり気にならない。それよりも、こうして自分のことのように怒ってくれるフィーネについつい嬉しくなってしまう。
「ありがとう、フィーネ。あなたがいてくれて本当によかった」
本心でそう告げると、怒っていたフィーネの顔は違う意味で赤くなった。
「そんな、お礼を言われるようなことはしていませんよ」
照れているのだろう。それを誤魔化すかのように、リラの服を脱がそうと、自分の仕事を進める。そんなフィーネに気づかれないようにリラはこっそりとため息をついた。
舞踏会があるから、と思っていたが、ヴィルヘルムがもうずっと自分の元を訪れないのは、後宮やどこかの貴族の令嬢に会いに行っているかららしい。世継ぎを望まれている立場なのだから、それは喜ばしいことで、王としては当然の務めだ。
分かっているはずなのに、ましてや自分だけ、なんて望むのはとんでもないことだ。頭では分かっているのに心は勝手に痛んで苦しくなる。再びつくため息にはやるせなさも込められていた。