祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
『それは、彼女の……』
ヴィルヘルムは、ゆっくりと手の中にあったものを二クラスに向かって放り投げた。孤を描きヴィルヘルムの手から離れたエメラルドのネックレスは、二クラスが受け取ると同時に、白い靄(もや)へと変化し、女性をかたどっていく。
「あ」
ついリラは叫んだ。二クラスの目に既にリラは映っておらず、ゆっくりと距離をとったところで、現れた者を改めて見ると、それはニクラスの目を通してみた、彼女その人だったからだ。
仮面はつけておらず、豊潤な金髪が揺れる。笑顔を向けてニクラスの前に立ったパウラは静かに両手でスカートの裾を持ち上げ、お辞儀をした。そんな彼女にニクラスは泣きだしそうな顔で手を差し出す。
『遅くなったけれど……私と踊っていただけますか?』
ゆっくりと笑顔で頷き、その手をパウラが取ったところで、ふたりはゆっくりと光に包まれていった。優しく、穏やかな光がリラの目には眩しかった。
辺りは再び、暗闇と静けさを取り戻す。ヴィルヘルムは何事もなかったかのように、足を進めて、転がったエメラルドのネックレスを拾い上げた。
「陛下、どうして……」
「踊るだけで歩く死者の未練が断ち切れるとも思わなかったからな。相手の女性について調べていた」
「調べるって。いつの人か、名前さえも分からなかったのにですか!?」
どんな魔法を使ったのかリラは不思議でならなかった。顔をはっきり見たのでさえ、さっきが初めてだったというのに。ヴィルヘルムはエメラルドを再度確認してから、白い布に包んで自分の服の内側にしまう。
ヴィルヘルムは、ゆっくりと手の中にあったものを二クラスに向かって放り投げた。孤を描きヴィルヘルムの手から離れたエメラルドのネックレスは、二クラスが受け取ると同時に、白い靄(もや)へと変化し、女性をかたどっていく。
「あ」
ついリラは叫んだ。二クラスの目に既にリラは映っておらず、ゆっくりと距離をとったところで、現れた者を改めて見ると、それはニクラスの目を通してみた、彼女その人だったからだ。
仮面はつけておらず、豊潤な金髪が揺れる。笑顔を向けてニクラスの前に立ったパウラは静かに両手でスカートの裾を持ち上げ、お辞儀をした。そんな彼女にニクラスは泣きだしそうな顔で手を差し出す。
『遅くなったけれど……私と踊っていただけますか?』
ゆっくりと笑顔で頷き、その手をパウラが取ったところで、ふたりはゆっくりと光に包まれていった。優しく、穏やかな光がリラの目には眩しかった。
辺りは再び、暗闇と静けさを取り戻す。ヴィルヘルムは何事もなかったかのように、足を進めて、転がったエメラルドのネックレスを拾い上げた。
「陛下、どうして……」
「踊るだけで歩く死者の未練が断ち切れるとも思わなかったからな。相手の女性について調べていた」
「調べるって。いつの人か、名前さえも分からなかったのにですか!?」
どんな魔法を使ったのかリラは不思議でならなかった。顔をはっきり見たのでさえ、さっきが初めてだったというのに。ヴィルヘルムはエメラルドを再度確認してから、白い布に包んで自分の服の内側にしまう。