祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―
「ああ。俺もそう思ったんだが、どうやら彼女の亡くなった父親が、黒魔術やらに詳しく、悪魔学にもかなり傾倒していたらしい。その集めていたコレクションはすべて彼女のものになっているらしく、疑うのも無理はない状態だそうだ」
「なるほど。血は争えないってことですか」
ブルーノは再びカップをとり、中の液体で喉を潤す。行儀がいい飲み方ではなかなった。一気に飲み干して、軽くなったカップをソーサーに戻し、ヴィルヘルムを見据えた。
「事実がどうであれ、調べてくれないか? 奥方も娘のことで精神を病み、主人もいっぱいいっぱいらしく、このままなら娘を手放すことも考えているそうだ」
そこには冗談のひとつもない、真剣そのもののブルーノがいた。ヴィルヘルムはしばらく口を閉ざした後、手筈を整える、と短く答えた。
「フィーネ、君の淹れた紅茶は抜群に旨かったよ。俺の専属になって欲しいくらいだ」
部屋を出る際、打って変わって軽い口調でフィーネを口説いているブルーノを見て、リラはブルーノという人物がよく分からなかった。観察するように眺めていると、ふとフィーネからこちらに視線を移されリラはどぎまぎした。
「リラ、今日は会えて嬉しかったよ」
「ありがとう、ございます」
笑顔で距離を詰めてくるブルーノにリラは礼を述べる。そしてブルーノはリラの頭のてっぺんから足の爪先までを観察するかのようにじっくりと見つめた。
じろじろ見られて喜ぶ人間はいない。ブルーノは失礼を詫びてから、それでも納得したような表情を見せた。
「銀色の髪に、さらには紫色の瞳。なるほど。珍しく、そして美しい。ヴィルヘルムが魅せられたのもよく分かるよ」
独り言のように呟かれた言葉にリラの心が波立つ。無意識に伏し目がちになり、はらりと滑り落ちた自分の銀髪が嫌でも視界に入る。シュライヒ家の件については、ブルーノに間に入ってもらいつつ、エルマーがブ詳しく段取りすることになり、この場は解散となった。
「なるほど。血は争えないってことですか」
ブルーノは再びカップをとり、中の液体で喉を潤す。行儀がいい飲み方ではなかなった。一気に飲み干して、軽くなったカップをソーサーに戻し、ヴィルヘルムを見据えた。
「事実がどうであれ、調べてくれないか? 奥方も娘のことで精神を病み、主人もいっぱいいっぱいらしく、このままなら娘を手放すことも考えているそうだ」
そこには冗談のひとつもない、真剣そのもののブルーノがいた。ヴィルヘルムはしばらく口を閉ざした後、手筈を整える、と短く答えた。
「フィーネ、君の淹れた紅茶は抜群に旨かったよ。俺の専属になって欲しいくらいだ」
部屋を出る際、打って変わって軽い口調でフィーネを口説いているブルーノを見て、リラはブルーノという人物がよく分からなかった。観察するように眺めていると、ふとフィーネからこちらに視線を移されリラはどぎまぎした。
「リラ、今日は会えて嬉しかったよ」
「ありがとう、ございます」
笑顔で距離を詰めてくるブルーノにリラは礼を述べる。そしてブルーノはリラの頭のてっぺんから足の爪先までを観察するかのようにじっくりと見つめた。
じろじろ見られて喜ぶ人間はいない。ブルーノは失礼を詫びてから、それでも納得したような表情を見せた。
「銀色の髪に、さらには紫色の瞳。なるほど。珍しく、そして美しい。ヴィルヘルムが魅せられたのもよく分かるよ」
独り言のように呟かれた言葉にリラの心が波立つ。無意識に伏し目がちになり、はらりと滑り落ちた自分の銀髪が嫌でも視界に入る。シュライヒ家の件については、ブルーノに間に入ってもらいつつ、エルマーがブ詳しく段取りすることになり、この場は解散となった。