高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
尻餅をついたせいでちょっとだけおしりが痛いけれど、就業時間に間に合わなくなるので、次にきたエレベーターに飛び乗った。

手に持った名刺をまじまじとみる。

「これって」

株式会社フジサキコンサルパートナー。

代表取締役社長、藤崎時宗とあった。

ここって出向先じゃ……。

9階で降りると、灰色のカーペットが敷かれた廊下に背の高い男性と女性がいた。

男性は黒いジャケットに白いTシャツ、白のデニムパンツに黒いローファーを合わせ、スリムな体型。

焦げ茶色の短髪に少しウェーブがかかっている。

まつげが濃くて長く、目を見張るぐらい先ほどロビーでぶつかった男性と同じく、こちらも整った甘い顔立ちが特徴的だった。

対照的にそばにいた女性は鼻がつくほどの香水を全身に浴びたような香りを放ち、ビジネスにふさわしくないような細身の体型にぴたっとした黒地に赤の花柄がちりばめられたミニスカートのワンピースにエナメル調の黒いピンヒールを履いている。

メイクもバサバサなつけまつげにマスカラ、顔色にそぐわない真っ赤な口紅。

髪の毛は腰まである茶色の髪をゆるく巻いて、小ぶりの高級ブランドのロゴが丸出しのカバンを持っていた。

「ちょっとヨリ! どういうことよ!」

「おまえとは終わりだってさっきから何回説明しなきゃならねえんだよ」

月曜からケバい女とちゃらそうな男が修羅場か。ご苦労様です。

その間をそっと抜けて奥にある会社へといこうとすると、

「こいつ、オレの女だ」

と、ふいに男性は長い腕を伸ばし、わたしの左腕をつかんだ。
< 10 / 122 >

この作品をシェア

pagetop