高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「あ、あの」

わたしはその男性をじっとみると、ニコっと涼やかな笑みで返してきた。なんだ、こいつは。

「こんな地味女のどこがいいのよ! ヨリ、ずっとあたしのこと好きだっていったじゃない」

ケバい女はもちろんわたしに全身全霊嫉妬のオーラを傾けている。

いや、あんたたちのことは知らないし、なんで睨まれなきゃいけないの。

「へえ。じゃあ、いうけど、おまえだって同じ会社の上司とつきあってるんだろ? ほら」

と、男性はジャケットからスマホの画面をケバい女にみせつけると、顔色がどんどん青ざめていった。

「な、なによ。そいつはただの上司。ヨリは特別なんだから」

「特別か。じゃあ、こいつもオレの特別だ」

といって、ぎゅっと肩を抱いた。

「あ、あの、わたし……んんっ」

と、言おうとすると、大きな手のひらでわたしの口をふさいだ。

大きな手から伝わるやさしい熱でわたしの体の熱が一気に急上昇する。

「そういうわけだ。上司にいっぱい貢いでもらえ。じゃあな」

「ヨリのバカ! 最初からあんたのことなんて、金目当てだったよ! 地味でブスな女とお幸せに!」

ケバい女は男性の脇腹に向け、小ぶりのバックをぶつけて、エレベーターに乗ってさっさといってしまった。

とんだとばっちりだ。確かにケバい女のいうことは正解だけど。

初対面にあんなにバカにされてますます気落ちしてしまう。

ようやく口をふさいだ大きな手を離してくれたけれど、わたしの心臓の高鳴りは一向にやまない。

「ありがとな」

まっすぐと向けるやさしい笑顔に胸がしめつけられる。

そうやって世の女性を骨抜きにして、さっきのケバい女を騙していたのだろうか。
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