高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
ラグジュアリーなホテルで二人素敵な朝を迎えた。

……って、何期待してるんだろう。

くたびれた灰色のスカートスーツと黄ばみはじめた白いシャツ、伝線寸前のストッキングに高かったから我慢してつけているブラとお揃いのゴムがのびかかったショーツ。

タバコの煙でいぶされた紺色のスーツと、よれよれの同色のネクタイ。

生地が薄くなってきたグレーのボクサーパンツとくたびれたシャツと靴下。

ベッドの下に無造作に転がっていた。

自室の古ぼけたワンルームにインテリア雑貨屋にあったセール品の緑色のカーテンからは日が差し込むことはなく、時折ベランダの窓の外からたたきつけるような大きな雨音が聞こえてきた。

時折聞こえる無神経なイビキとともに右側に眠る男の広い背中をじっと見つめる。

これでいいんだろうか。

起こさないように小さくため息をつきながら、愛し合った翌朝、いつも置いてけぼりをくらわれているのではと不安になる。

今回ようやく好きになった人と愛し合うことができたっていうのに。

最近になって連絡が滞っていたのに、金曜の夜突然、『今日暇か?』といった簡単なメッセージがスマホに送られた。

送る暇なくすぐに彼はわたしのマンションの部屋にやってきて、会いたかったという言葉にほだされ、体を預ける。

「お願い……せかさないで」

久々だからお互いの体を求めあう熱い情熱を傾けてくれるのはありがたい。

でも、もう少し愛することに集中してゆっくり味わいたいのに。

「いいだろ。好きなんだから」

求められるだけでもありがたいんだと、体を広げてしまう。

求められるだけ求められ、わたしの声に耳を傾けていないような、どこか一方通行のような気がしても知らないふりをした。


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