高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
立ち止まってはすぐに躊躇してしまう。

いつものんびりしているせいか、欲しいと思ったものがなかなか手に入らない。

洋服だって自分の進路だって、好きな人だって。

まともな恋なんかしたことがなかった。

好きになった子は結局友達に先を越されていた。

大学の先輩を好きになったけれど、後輩に先を越され、この間、結婚式の招待状が届いて、返事も出せぬまま部屋の隅にある引き出しの中にしまったまんま。

早く恋がしたいと思い、職場恋愛を狙ったものの、好きになった先輩は彼女がいたり、奥さんがいたりとすでに恋愛できない状況下に置かれていた。

同年代の学生時代に知り合った友人に誘われ、合コンをしたときに出会ったのが、今の彼である、1個上の由基だ。

彼はやはり大きな企業のサラリーマンであり、期待の新人だと合コン仲間の一人が紹介してくれた。

たいした話をしたつもりはないんだけど、お酒の話だったり、世間話を軽く話していくうちに気がついたら付き合うことになっていた。

友人からは出来過ぎじゃないのといわれたけれど、まともに付き合ったことがなかったわたしにとっては気持ちにあせりがあったのかもしれないけれど、ここで付き合いが終わるのもなんだよな、という曖昧な理由から付き合うことになった。

デートといってもだいたいが互いのマンションを行き来して週末ベッドで過ごしているだけで、どこかにいったりはしていない。

彼曰く、外に出かけるなんてコドモじみたことしたくない、とのこと。

わたしも彼の話に賛同しているけれど、さすがに半年にもなると、そろそろでかけたくなってきて、旅行のパンフレットを会社帰りに持って帰り、気持ちを高ぶらせながら、平日の夜をそのパンプレットを片手に一人夕飯を食べながら、頭の中で由基と旅行気分を満喫していた。

そして週末、わたしの部屋へ泊まりにきたときにさりげなくテーブルの上に置いてみたけれど、見向きもせず、わたしの体にかじりつくだけ。

しまいには、このチラシ、センスないよな、と由基は無関心なままゴミ箱に投げ捨てた。

せっかく由基と一緒に出かけられるチャンスだったのに、と思いながら、朝、テレビをつけると旅行番組がやっていたので、それをぼんやりみながら擬似的旅行を妄想していた。
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