高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
不機嫌そうな時頼さんとは言葉を交わさないまま、昼休みが過ぎ、お昼を買いに出ようとしたとき、時頼さんも席を立つ。

「つむぎ、今度の土曜、用事あるか?」

「えっ」

コンビニで昼ごはんを買い、戻る二人っきりのエレベーターのなかで時頼さんが低めな声で話しかけた。

「用事って、プライベートなことですか」

「ああそうだ。つむぎ、暇そうだもんな」

「暇って。一応用事ありますって」

「用事ってなに? ひとりで食べ放題とかいくのか。まあ、通りでもちっとしてるからな」

「だから、もちっとしてるのが余計なんですってば」

「お二人、仲がよさそうですね」

事務所のドアをあけると、藤崎社長が所内に戻ってきていた。

挨拶をかわしたが、藤崎社長はいつしなく冷たい視線を注いでいる。

「よさそうって、勘違いしないでください」

「で、何を話していたんですか」

「時頼さんが土曜暇かと」

「ベラベラしゃべんなよ」

藤崎社長の唇の口角があがり、先ほどまで冷たかった眼差しが普段の穏やかさを取り戻していた。

「ほほう。二人でデートですか」

「デートって」

時頼さんは呆れていると、

「つむぎさん、お困りでしょう。では、僕もついていきましょう」

藤崎社長はここぞとばかりに張り切った声をあげた。

「だから、なんで兄貴もなんだよ」

「いいじゃないですか。いいですよね、つむぎさん」

「……はい」

「はい、ってなんだよ、それ」

「懇親会ってことでいいんじゃないんですか。親睦を深めるいいチャンスですね」

クスクスと軽く笑っていたものの、藤崎社長はいたずらっぽい視線をわたしにぶつけてきた。
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