高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
新入社員が研修を終え、各部署へ配属された6月。

わたし、片桐つむぎはいつもの通り、会社へ出社すると、わたしの顔をみるなり、顔をこわばらせた薄毛の部長からいきなり呼び出しをくらった。

「子会社に出向してもらいたい」

「え、どういうことですか?」

「子会社に配属される予定だった子がやめちゃってね。代わりといってはなんだけど、片桐さんにお願いしようと思っていたんだ」

と、薄毛部長からは一枚の紙が渡された。

子会社へ出向の依頼の文面が載ったものだった。

月曜日でまだエンジンがかからない半信半疑の話に、一気に目が覚めた。

「わたし、ですか?」

「ここよりも家から通いやすくなると思うし、ウチよりも少人数でやっている子会社のほうが片桐さんにとっても都合がよいと思うんだが」

「……はい」

「じゃあ、来週から頼んだよ」

薄毛部長は諭すようにいうと、自分の仕事を始めたので、わたしも自身の席に座り仕事をはじめた。

周りから浴びられる視線に気づかないふりをして。

わたしの勤めている会社、P&Wコーポレーション。

もともと老舗の印刷業界からウェブ系企業の草分け的存在として地元に根付く。

ウェブ系の会社に憧れ、地元の大学を卒業後、入社した。

それでも地元では1、2を争うぐらいの優良企業ということもあり、人気のある会社のひとつ。

そういえば、合コンのときに初めて話しかけてくれた彼の一声目が、どこの会社勤めてるの、だった気がした。

でもやっていることは、よくある営業事務だ。

せっかく身につけようとしていた技術はどこへやら、それでも与えられた仕事には真面目に取り組もうと努力しているのに、周りよりも仕事が遅くて効率があがらない。

先週も見積書でミスが発覚し、営業担当から怒られたばかりだ。
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