高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「彼女? なにそれ、あたしにはヨリしかいないってわからないの!?」

「仕事中だ。これ以上つきまとうな」

ため息のような時頼さんの言葉をよそに、時頼さんには眉をひそめながらケバ子は肩を落としていた。

すぐに肩をいからせ、掴みかからんとばかりにわたしに向けて手を出そうとしていたが、時頼さんに腕をおさえられた。

「ヨリ……。そこのクソ女! 許さないから! 絶対に」

声を荒げていったケバ子は、ふんと顔を背けて来た道を戻っていった。

どうやらケバ子に宣戦布告をつきつけられてしまったようだ。

じとっと湿る背中の汗を感じながら、会社のビルへ入る。

会社のエレベーターのなかで、わたしはため息をもらす。

「追いかけなくていいんですか? ケバ……あのひと、時頼さんのことずっと好きだったんじゃないんですか」

「もう終わったことだ。それに今、好きなのはお前だから」

「だからわたしは時頼さんのことは」

「上等だ。好きなやつからお前を奪ってやるから」

と、時頼さんは逆に火がついたようで自信たっぷりに勢い良くしゃべると、反論もできないまま事務所のある階に到着した。
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