高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
熱くなった体を冷ますような冷たい声が事務所のドアを開けた瞬間した。

藤崎社長はすでに席に向かい、仕事をすすめていたところだった。

時頼さんは珍しく鼻歌まじりで自分の席につく。

いい表せないような雰囲気を藤崎社長が無言で出しているのにもかかわらず。

「あの、時頼さんとランチへいってきました」

たまらなくなってわたしから藤崎社長へ声をかけた。

藤崎社長はわたしへ向けて何事もなかったかのように、にこりと笑いかける。

「楽しいランチだったんですね」

「まあね。兄貴とは違ってつむぎと堂々とごはんしてきたし」

「仲がいいと仕事がはかどるからな。今度は僕も誘ってもらおうかな、つむぎさん」

「なんで兄弟揃ってメシにいかなきゃいけないんだよ。二人っきりがいいんだもんな、つむぎ」

時頼さんがむくれながらわたしに顔をむける。

困惑していると、藤崎社長はふっ、と軽く笑った。

「お昼休み、リフレッシュしたということで、いいかな? 時頼。さあ、仕事だ。あの、つむぎさん、ちょっといいでしょうか?」

「は、はい」

「この見積書のことなんですがね」

わたしは急いで藤崎社長に近づく。

藤崎社長は内容を説明している最中、胸をさすような冷たい眼差しを送ってきた。
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