高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
見積書を社内サーバーのフォルダに入れてからしばらくして社内間のメールに一通、受信があった。

『つむぎ、今度はどこで食事する? いい店紹介するから。予定空けとけ』

メールを開封してみると、差出人は時頼さんだった。社用のメールだからと思ったら完全にプライベートのメールで驚く。

びっくりして時頼さんに目を移すと無愛想ななかにほんの少しだけ笑みをこぼしていた。

こんなの返信できるわけない。仕事中なのに。

「メール読んだか? よろしく頼むわ」

と、ぽんぽんと軽く肩をたたき、時頼さんは藤崎社長へ営業先周りにいってくると告げると事務所を出ていってしまった。

こんな雰囲気になってしまって、さすがに藤崎社長に顔を合わせづらい。

夕刻になり、二階堂さんも出向先からそのまま直帰すると連絡が入った頃、藤崎社長は大きく背伸びをして立ち上がると、わたしに目をむける。

メガネ越しの鋭い視線にどきんと胸が高鳴ってしまう。

「大胆ですね」

ぽつりと低い声でつぶやくと、わたしの座る席の後ろへ移動した。

「時頼がですよ。どうしたんでしょうね、つむぎさんに対して積極的です」

藤崎社長に見下ろされながら、肩にかかる髪の毛を長い大きな指で感触を確かめている。

「あの、実は……」

「どうしたんですか、つむぎさん」

「時頼さんから告白されまして、わたしのことが好き、と」

「僕だけじゃあ足りないってことですか?」

「そういうつもりじゃ」

「いいですよ。許します。契約していますからね」

と、髪の毛から今度は首元にある緑色のスカーフの結び目を指でもてあそんでいる。

「スカーフ、とってみせてあげればいいんですよ、時頼に」

「……そ、そんな」

「時頼、ますます火がついてしまいそうですね」

くすっと藤崎社長は笑い、顔のサイドにかかるわたしの髪の毛を耳にかけると頬にキスをした。
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