あなたに捧げる不機嫌な口付け
……いいのかな。


大事に食べたいから今日は一つで我慢するんだ、とかさっき言ってなかった?


まあいいや、気にしない気にしない。


「俺だって食べたいけど苦手なの!」


むくれながら、ぎゃーす、と吠える諏訪さん。


うるさい。


「それに髪色は関係ないでしょーが、キャラメル色にしてくださいなんて美容院で言ったら笑われるわ!」

「そうだね」


確かにそうだ。


格好つけて「キャラメル色にしてください」と言っているところを想像したら、なぜか妙に似合っている。


おかしくて笑うと、超高速でスマホを操作した諏訪さん。


何、どうしたの、と思う間もなくシャッター音がした。


不機嫌に眉根を寄せる。


「ちょっと。消して」


何を撮っているのか。私なんか撮ってどうする。


というか許可はどうしたの。無断で撮るんじゃない。


「えー、せっかくいつもより笑ってたのに」

「何それは。いいから消して。肖像権の侵害」


ぶうぶう騒ぐ諏訪さんにきっちりばっちり保存された挙句、よく分からないうちにツーショットを撮ることになった。

なんでだ。


「はい笑って笑っ……」


笑顔を消して固まる諏訪さんの表情は、ザ・驚愕! みたいなふざけたもので。


「何」

「祐里恵笑えたの!?」

「人を何だと思ってるの。それぶっ壊すよ」


だん、と力いっぱい振り上げた足で力いっぱい諏訪さんの足を踏みつける。


「……理不尽だ」

「どこが」


恨めしげにされたのなんか知らない。


正当な仕返しである。
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