あなたに捧げる不機嫌な口付け
そして、写真を撮った後は。


「うわー、本当に笑ってるよ、笑顔だよ。やばいよこれ奇跡だよこれ」


ためすすがめつする諏訪さんに、青筋が立つ。


「……作り笑いくらいするんだけど」


頬が引きつった。


「待って待って待ってごめんって、壊さないで落とさないで頼むから!」

「…………問答無用」

「泣くよ!? 本当やめようよ!!」

「泣けばいいよ」

「うわあああ!?」


慌てた諏訪さんは結局、私にもう一つ、大好物のフィナンシェを渡すはめになった。


フィナンシェ美味しい。


「次から気をつける、ほんと気をつける……」


つんつん、とひとさし指を合わせる諏訪さんをジト目で見る。


可愛さアピールはいらない。


「馬鹿なの? 始めから気をつけなよ」

「あ、う、うん。ごめん」


コーヒーも寄越せと強要してみた。


そうしたら諏訪さんがどんどん暗くなっていったので、仕方なく服を引っ張る。


「諏訪さん」

「な、何……」

「ちょっとこっち」


服伸びるんだけどねえ祐里恵、とか言われても知らない。


「ねえ、何」

「いいから笑って。いくよ、三、二、一」


強引に引き寄せてシャッターを切った。
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