あなたに捧げる不機嫌な口付け
小さな子どもに大人は夢を持てと言う。努力すれば叶うからと言う。


しょうらいのゆめをかんがえましょう。誰しも一度は言われたことがあるだろう。


だから子どもは夢を見る。


将来何になりたいか、理由つきで考えなくてはいけないような気になって、考えて、話したり教えたりして。


ヒーローになりたいでもいい、お姫様になりたいでもいい。


小さい頃の夢は後で笑い話になるか、すっかり忘れてしまうか、仮に覚えていて、ずっと追いかけていってもほとんど叶わないか。


そう知っていても、大人は夢を持てと教え続ける。


幼い頃はそれで構わないかもしれないけど、大人に近づくにつれて周りが変わる。


ヒーローになりたいって言ったら笑われること間違いなし。


まだそんなこと言ってるの、なんて言われる中で挫折して、ひたすら立ち直り、ひたすら突き進む。


だってヒーローになりたいんだ、と。


今どきヒーローを夢見てはいないだろうけど、きっと何かなりたいものがあるのだろう。


あの人はそういう素直な強さを持っていた。


私みたいに諦めてしまわなかったのだろう。


私みたいに、夢を弁えてしまわなかったのだろう。
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