あなたに捧げる不機嫌な口付け
しぼり出した私の髪を撫で、抱きしめる手を緩めて顔を上げさせて、諏訪さんは軽く笑った。


「たとえば俺みたいな?」

「……そうだね」

「それはよかった」


少なくとも隣にいやすいのも、私にとって聡いのも、考え方が似ているのも、諏訪さんの方。


「祐里恵、コーヒーもう一杯飲む?」

「飲む」


私の髪を大きな手がすく。


立ち上がって諏訪さんはキッチンへ向かった。


――こういうとき、さらりと何もなかったように流すのも、諏訪さんの方だ。


ねえ、諏訪さん。


だから私、お菓子に釣られたなんて理由を用意しなくても会いに来るのが構わないくらい。


諏訪さんの隣が好き。
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