あなたに捧げる不機嫌な口付け
ただいま、がいい。
諏訪さんと登録してある全てを恭介さんに書き換えていると、電話が来た。
こうでもしないと忘れそうで真っ先に直したから、表示は恭介さんだ。
案外手間がかかってちょっと恨みたくなってきた当の本人が、変わらない気だるさで話し出す。
元凶の通常運転に少し苛ついた。
「祐里恵、今日暇?」
「……恭介さん、私昨日も行ったでしょ」
「マフィンあるよマフィン」
「……はいはい。行くよ」
「あ、マフィン好きなんだ。覚えとくね」
余計なことを言う諏訪さんには構わずに、さっさと通話を切り上げる。
……本当に一つ一つを覚えているから厄介というか、馬鹿じゃないのかと思うというか。
メモなんか残していないくせに妙に細かく覚えていて、実にさりげなく心遣いをする諏訪さ、……恭介さんに何度驚いたことか。
私が記憶している限りの好みだとか服装だとか思い出だとかを、恭介さんは忘れたことがなかった。
一度言った事柄は全て覚えているらしい。
戯れはさておき、注意なんかで恭介さんに同じものを二回言ったことはない。
自分で考えての行動も、私の好みに上手く合わせてくれる。
して欲しいことはするし、して欲しくないことはしない。
相手に合わせるのが上手い人なんだと早々に知った。
だから彼はモテるのだろうし、一緒にいて疲れないのだろうし、線引きが絶妙なんだろう。
こうでもしないと忘れそうで真っ先に直したから、表示は恭介さんだ。
案外手間がかかってちょっと恨みたくなってきた当の本人が、変わらない気だるさで話し出す。
元凶の通常運転に少し苛ついた。
「祐里恵、今日暇?」
「……恭介さん、私昨日も行ったでしょ」
「マフィンあるよマフィン」
「……はいはい。行くよ」
「あ、マフィン好きなんだ。覚えとくね」
余計なことを言う諏訪さんには構わずに、さっさと通話を切り上げる。
……本当に一つ一つを覚えているから厄介というか、馬鹿じゃないのかと思うというか。
メモなんか残していないくせに妙に細かく覚えていて、実にさりげなく心遣いをする諏訪さ、……恭介さんに何度驚いたことか。
私が記憶している限りの好みだとか服装だとか思い出だとかを、恭介さんは忘れたことがなかった。
一度言った事柄は全て覚えているらしい。
戯れはさておき、注意なんかで恭介さんに同じものを二回言ったことはない。
自分で考えての行動も、私の好みに上手く合わせてくれる。
して欲しいことはするし、して欲しくないことはしない。
相手に合わせるのが上手い人なんだと早々に知った。
だから彼はモテるのだろうし、一緒にいて疲れないのだろうし、線引きが絶妙なんだろう。