あなたに捧げる不機嫌な口付け
待ってて、だと離れないで待つかもしれないから、離れてって言えばいいだろう。
「コーヒー飲み終わっちゃいたいから、離れて」
「了解」
冷めたコーヒーは美味しくないというのは共通見解なので、じゃれるのをやめて避けてくれた。
避けてくれたのはいいんだけど、なんでこの人は上機嫌に私を見つめてるんだ。暇人なの。
にこにこうるさい笑顔の恭介さんをじろりと見て、残りのコーヒーを一気にあおる。
……そうまじまじと見つめられると飲みにくい。
マグカップを置くと、恭介さんは早速距離を詰めた。
「暑いってば」
「パスワード何にしたの?」
意図的に流した恭介さんに、だから教えたら意味ないでしょ、と溜め息を吐いて、できる限り抽象的に答えた。
「なんていうか」
「うん」
試しに分かりにくく言葉を選ぶ。
「……好きな人の、誕生日?」
「え」
固まった恭介さんが、瞬きを二度して、飲み込み直して、騒いだ。
「え……!?」
顔が青白い。
この様子だと、もしかして私、今すぐにでもそばを離れないといけないのかな。
なんでそこで固まるの。
「好きな人!? 祐里恵そんな人いたの!?」
「うん。いるけど」
「誰!? どういう人!?」
食いつく恭介さんに内心苦いものを飲み込む。
「好きな人っていうか、ファンな人の誕生日」
途端、恭介さんの雰囲気が柔らかくなった。
「……びっ、くりしたー……」
うん。……面倒臭い。
「コーヒー飲み終わっちゃいたいから、離れて」
「了解」
冷めたコーヒーは美味しくないというのは共通見解なので、じゃれるのをやめて避けてくれた。
避けてくれたのはいいんだけど、なんでこの人は上機嫌に私を見つめてるんだ。暇人なの。
にこにこうるさい笑顔の恭介さんをじろりと見て、残りのコーヒーを一気にあおる。
……そうまじまじと見つめられると飲みにくい。
マグカップを置くと、恭介さんは早速距離を詰めた。
「暑いってば」
「パスワード何にしたの?」
意図的に流した恭介さんに、だから教えたら意味ないでしょ、と溜め息を吐いて、できる限り抽象的に答えた。
「なんていうか」
「うん」
試しに分かりにくく言葉を選ぶ。
「……好きな人の、誕生日?」
「え」
固まった恭介さんが、瞬きを二度して、飲み込み直して、騒いだ。
「え……!?」
顔が青白い。
この様子だと、もしかして私、今すぐにでもそばを離れないといけないのかな。
なんでそこで固まるの。
「好きな人!? 祐里恵そんな人いたの!?」
「うん。いるけど」
「誰!? どういう人!?」
食いつく恭介さんに内心苦いものを飲み込む。
「好きな人っていうか、ファンな人の誕生日」
途端、恭介さんの雰囲気が柔らかくなった。
「……びっ、くりしたー……」
うん。……面倒臭い。