あなたに捧げる不機嫌な口付け
「美味しくないに決まってるでしょ」

「んー、なんか甘い感じはした」


ロイヤルハチミツ甘い香りつき、なんだから甘い感じに決まっている。


こんな少量じゃあ味なんてよく分からないだろうし、というか無味だろうし、味ではなくて香りが甘いんだろう。


おそらく本当に味が気になったというよりは、とりあえず理由になるかなと計算した上での行動だ。


こっちの苦労も知らないで、恭介さんはやたらとキスをしたがる。


したいならしたいと言えばいいのに、なぜか急にふいをついてキスしたいらしい。


傍迷惑な。


「恭介さんのせいで私のリップクリームの消費量膨れ上がったんだけど」


案外高いんだよ。


本来そんなに使わないのに、毎月買ってたら悔しいじゃないか。


「塗らないとか」

「荒れるから嫌」

「うーん、返す?」


状況にかこつけてアホな発言とともに濡れた唇を近づけてきたので、慌てて押し返す。


「ちょっと……!」

「そんなこと言わずに」

「いらないいらない、塗り直すから」


全くもう、と呆れて塗り直したら、じっと見つめられたので。


「何?」


首を傾げた私に、恭介さんは意地悪く笑った。


「いやー、なんかあれだよね、塗ってあると落としたくなるよね」

「こ、っの変態!」
< 182 / 276 >

この作品をシェア

pagetop