あなたに捧げる不機嫌な口付け
そう思ってたよ。
「何」
学校からの帰り道、恭介さんの部屋に向かう途中。
確認しようと取り出したところで、電話をかけてきたのは恭介さんその人だった。
今連絡しようとしてたのに。
いつも確認する時間帯にかけてきたってことは、今日は都合が悪いんだろうか。
彼は私を部屋に呼ぶとき必ず電話をした。
そのせいで、他の恭介さんとの連絡手段はほとんど履歴がないし、あっても一言二言、何でもないささいなやり取りで埋まっている。
大抵は『ごめん、電話が駄目だからこっちで』だ。
どうしたんだろうと思いながら通話をタップすると。
「祐里恵、部屋に来ない?」
「は……?」
『今日暇?』じゃ、ない……? 恭介さんが?
声は恭介さんのものだ。
ああ、でも。
へらりとした作り笑いでもひょうひょうとした態度でも、何でもいい。
そうしたらまだ救われるのに、笑っていない。
これはあまりに無表情すぎる。
「何かあった?」
「別に何も」
慎重に口にした質問に返されたのは、冷えた否定で。
これで何もないわけがなかった。
おかしい。
……おかしい。
恭介さんが変だ。
「もう一度聞くけど、何が」
学校からの帰り道、恭介さんの部屋に向かう途中。
確認しようと取り出したところで、電話をかけてきたのは恭介さんその人だった。
今連絡しようとしてたのに。
いつも確認する時間帯にかけてきたってことは、今日は都合が悪いんだろうか。
彼は私を部屋に呼ぶとき必ず電話をした。
そのせいで、他の恭介さんとの連絡手段はほとんど履歴がないし、あっても一言二言、何でもないささいなやり取りで埋まっている。
大抵は『ごめん、電話が駄目だからこっちで』だ。
どうしたんだろうと思いながら通話をタップすると。
「祐里恵、部屋に来ない?」
「は……?」
『今日暇?』じゃ、ない……? 恭介さんが?
声は恭介さんのものだ。
ああ、でも。
へらりとした作り笑いでもひょうひょうとした態度でも、何でもいい。
そうしたらまだ救われるのに、笑っていない。
これはあまりに無表情すぎる。
「何かあった?」
「別に何も」
慎重に口にした質問に返されたのは、冷えた否定で。
これで何もないわけがなかった。
おかしい。
……おかしい。
恭介さんが変だ。
「もう一度聞くけど、何が」