あなたに捧げる不機嫌な口付け
部屋に来ないか、なんて、答えは決まっている。
私は私を安売りしない。恭介さんに同情もしない。
「嫌」
きっぱり言い切ると、緩い吐息が小さく聞こえた。
それは口角を上げたような優しさが含まれた吐息で、恭介さんはなぜか、ほんの少し笑ったようだった。
どうして笑うの。
……やっぱり、相変わらず恭介さんはよく分からない。
いつまでも掴みどころのない、煙草のような男。
「恭介さん」
「…………」
呼びかけに言葉は返って来なかった。
「恭介さん」
もう一度呼ぶ。やっぱり返事は返って来ない。
恭介さんの物問いたげな沈黙が空気を重くした。
努めて明るい声を出す。
明るくて何も考えていなそうで、ふわりと足早に消える軽い音。
きっと、そのくらいがちょうどいいから。
「やっぱり、コーヒーを飲みに行くよ。そうしたら帰るね」
「…………」
またも無言で、しばらく重苦しい沈黙があった後、電話が切られた。
本当にどうしたんだろうか。
……大丈夫だろうか。何か、あったのか。
どれだけ考えても堂々巡りだったから、恭介さんの部屋に急いだ。
私は私を安売りしない。恭介さんに同情もしない。
「嫌」
きっぱり言い切ると、緩い吐息が小さく聞こえた。
それは口角を上げたような優しさが含まれた吐息で、恭介さんはなぜか、ほんの少し笑ったようだった。
どうして笑うの。
……やっぱり、相変わらず恭介さんはよく分からない。
いつまでも掴みどころのない、煙草のような男。
「恭介さん」
「…………」
呼びかけに言葉は返って来なかった。
「恭介さん」
もう一度呼ぶ。やっぱり返事は返って来ない。
恭介さんの物問いたげな沈黙が空気を重くした。
努めて明るい声を出す。
明るくて何も考えていなそうで、ふわりと足早に消える軽い音。
きっと、そのくらいがちょうどいいから。
「やっぱり、コーヒーを飲みに行くよ。そうしたら帰るね」
「…………」
またも無言で、しばらく重苦しい沈黙があった後、電話が切られた。
本当にどうしたんだろうか。
……大丈夫だろうか。何か、あったのか。
どれだけ考えても堂々巡りだったから、恭介さんの部屋に急いだ。