あなたに捧げる不機嫌な口付け
乱暴な音が響いて、恭介さんの腕が入った頭以外はきっとあざになってるんだろうな、と諦めるくらいには体を強かに打ちつけた。


だけど、体中の痛みより、恭介さんの揺れる鳶色が気になった。


乱暴にボタンを外されたコートはあっさり腕を抜かれ、剥ぎ取られ、投げ捨てられて横に広がっている。


逃げ場を塞ぐみたいにのしかかる恭介さんが重い。


両手はまとめて片手で掴まれた。


性急に降ってきたキスで息が苦しい。


……私ができる慰めを、恭介さんが忘れるとは思えない。


どうしたの。何をそんなに焦ってるの。


なんでそんなに、私を見て不安そうな顔をするの。


何度か肩を叩いたけど、私が嫌がっているものと思ったらしい。


一層激しさと乱暴さを増していく。


「さ、酸、欠だからっ……息、で、きない、か、らっ……!」


まともに話させてくれない恭介さんを無理矢理押しのけて息を整える。


ギラつく瞳と目が合った。


「恭介さん」

「……俺は謝らないから」

「うん、いいよ」


謝らなくて、いいよ。


そうじゃなくて。


「もう一回、して」


もう一回する? とも。もう一回しよっか、とも言えなくて、そんなことを言った私に。


きゅうう、と歪んだ瞳を誤魔化すみたいに、また乱暴なキスが降ってきた。
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