あなたに捧げる不機嫌な口付け
しばらくして。
忘れようとしたのがよかったのか、忘れようといろいろを詰め込んで意識の隅に押し込めたからか、すっかり彼を思い出さないでいられている。
たまに思い出しても、ちくりと刺す痛みは流せる程度だ。
まだ大丈夫。
大丈夫。
……大丈夫。
メモもないし履歴は消してしまったし、あの日からどのくらい経ったかは忘れたけど、まだ冬の厳しい寒さが続いている。
いくつか、授業が少し急ぎ足になった。
担当の先生曰く、この一年で終わらせる分がまだ終わっていないらしくて、予想外に残っているんだとか。
来年度に持ち越しにならないように、必死に進めている。
もう少し計画的に進めて欲しい。騒いでいた生徒たちも悪いのだけど。
何とか終わるといいな。今の先生は分かりやすいから、持ち越しになったら困る。
ばたばたと課題に追われ始めた。
今年は珍しく、降雪量が多いらしい。
気温がぐっと下がって、刺すような、凍った冷たい空気になった。
マフラーに顔を埋めていないと、鼻や頰がすぐに真っ赤になる。
元気に素足の人もいるけど、普通に寒いので私はタイツ。ホッカイロも常備してある。
そんなふうに、慌ただしく一日が過ぎた。二日が過ぎた。三日。四日。
一週間。
その日も慌ただしく一日を終えて、放課後、帰り道が同じ友達と別れて角を曲がったら。
「祐里恵」
鼻の頭を赤くした人に声をかけられた。
忘れようとしたのがよかったのか、忘れようといろいろを詰め込んで意識の隅に押し込めたからか、すっかり彼を思い出さないでいられている。
たまに思い出しても、ちくりと刺す痛みは流せる程度だ。
まだ大丈夫。
大丈夫。
……大丈夫。
メモもないし履歴は消してしまったし、あの日からどのくらい経ったかは忘れたけど、まだ冬の厳しい寒さが続いている。
いくつか、授業が少し急ぎ足になった。
担当の先生曰く、この一年で終わらせる分がまだ終わっていないらしくて、予想外に残っているんだとか。
来年度に持ち越しにならないように、必死に進めている。
もう少し計画的に進めて欲しい。騒いでいた生徒たちも悪いのだけど。
何とか終わるといいな。今の先生は分かりやすいから、持ち越しになったら困る。
ばたばたと課題に追われ始めた。
今年は珍しく、降雪量が多いらしい。
気温がぐっと下がって、刺すような、凍った冷たい空気になった。
マフラーに顔を埋めていないと、鼻や頰がすぐに真っ赤になる。
元気に素足の人もいるけど、普通に寒いので私はタイツ。ホッカイロも常備してある。
そんなふうに、慌ただしく一日が過ぎた。二日が過ぎた。三日。四日。
一週間。
その日も慌ただしく一日を終えて、放課後、帰り道が同じ友達と別れて角を曲がったら。
「祐里恵」
鼻の頭を赤くした人に声をかけられた。