あなたに捧げる不機嫌な口付け
「……そっか」


私の足跡は、いつの間にか一つ増えていたらしい。


せっかくなので青い袋の豆で淹れてみたら、私が家で飲むのと同じ、豊かな香りがした。


「できたよ」

「はーい」


マグカップを持って行く途中で気づく。


さっきはお菓子に真剣で見ていなかったけど、消臭剤が増えていた。


……別に、煙草が苦手だから離れたわけじゃないんだけど。


気にしてくれたのかなと思うくらいには、至る所に消臭剤が増えていた。


カーテンやソファーも洗濯したのかもしれない。

変わっていないけど、染みついていた匂いがしなかった。


お菓子とコーヒーを食べ終わる。


片付けをしてソファーに並んで座りながら、そっと名前を呼ばれた。


「祐里恵」

「何?」


振り向いて、諏訪さんの顔に固まった。


……何、その砂糖菓子みたいな甘ったるい顔は。


びっくりして思わず噴き出してしまって、それにむくれた諏訪さんにまた笑って。


ぎこちなく微妙にあいていた距離をお互いに詰める。


「ねえ、すわさ」
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