あなたに捧げる不機嫌な口付け
「それとも、ごめんって謝ったら許してくれるのか。違うだろ」

「……うん」


諏訪さんは決して謝らなくていい。

謝ることなんてない。


そう頭では分かっているのに、やっぱり子どもな私は謝って欲しいのだ。


謝られないのはないがしろにされたような気がするなんて、本当どうしようもない。


そして、実際に謝られたら今度は子ども扱いされた気がして傷つくのだから、目も当てられない。


この沈黙と諏訪さんの誤解と私の焦りを解くために、何かを言わなければと思った。


「諏訪さ」

「……名前で呼んでもくれないの」


ひどくかすれた声が落ちた。


何度目かの確認は堂々巡りし続けている。


肩で息をする諏訪さんが、くしゃりと顔を歪める。


言葉が三度荒れた。


「俺との関係を、そんなに何も変えたくないの」


違う。


「リセットしてまたあの曖昧な関係を続けて、何もかもなかったことにするのかよ」


違う。


「なあ、祐里恵」
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