あなたに捧げる不機嫌な口付け
ああ、どうしよう。


何か、こう、今までもがいて気にしていた諸々がすとんと落ち着く。


気にならなくなったわけじゃないけど、優先順位が下がった。


私は恭介さんが好きで、

恭介さんはそんな外聞とか体面とか気にしていなくて、

私が女子高生で子どもだってことはなおさら気にしていなくて。


それなら、いいかな。いいんじゃないかな。


こういう恭介さんが好きだ。


……好きだ。


ああもう、困ったなあ、と思った。


「ねえ、恭介さん」

「ん?」


呼び慣れた名前をそうっと呼ぶ。


「どうしよう、これ以上言い訳が思いつかないの」

「嬉しいね」


にやりと笑って、恭介さんは私を抱き寄せた。


「それはさ、祐里恵」

「……うん」


一つ、ゆっくりと相槌を打つ。


「付き合ってくれるってことで合ってる?」

「好きに……っ」


感慨に詰まった返答は文を結ぶ前にさらわれた。


詰まったのなんて知らないだろうと安心するくらいに、早く。


せっかちなキスに眉根を寄せる。


「まだ何も言ってないでしょ」

「言ったよ。好きにすれば、だろ?」


自信を持って胸を張った恭介さんが、にやりと意地悪に笑ってみせる。


「な、」


ひょうひょうとうそぶいたくせに、一転。
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