あなたに捧げる不機嫌な口付け
恭介さんが好き。
好き。
込めた思いが重なる唇を通して伝わればいい。
この熱から、きっと伝わってるって信じてる。
「祐里恵」
舌たるい呼び声が耳障りよく聞こえ始めた今は、秘密めいた私たちの関係は、ほんの少しずつ変化して。
他の女性のマーキングみたいな女性用の小物が部屋から消えて、底の擦りきれたローファーは大人びた踵の高いブーツになって。
放課後は毎日のようにこの部屋を訪れて。
呼び名が変わった。
恭介さんの外見が変わった。
関係が変わった。
頭を支える手に力を込めて拘束する恭介さんに、思う。
(別に逃げないのに)
恭介さんがキスしたいなら協力するのに。
これ見よがしに流し目を寄越すから、荒い息で背伸びをした。
……女子高生と大人なんて、あまりいい顔をされないかもしれない。
でも、この関係が、私たちにしか分からない理由で構わないから、叶うならずっと続けばいい。
――あなたに捧げるは、不機嫌な口付け。
改めてしたキスは、やっぱり煙草の味がほとんどしなくて。
もしかして、初めの頃に提示した好きな人の条件を本当に全部守るつもりかと、甘ったるいことを考えた。
Fin.
好き。
込めた思いが重なる唇を通して伝わればいい。
この熱から、きっと伝わってるって信じてる。
「祐里恵」
舌たるい呼び声が耳障りよく聞こえ始めた今は、秘密めいた私たちの関係は、ほんの少しずつ変化して。
他の女性のマーキングみたいな女性用の小物が部屋から消えて、底の擦りきれたローファーは大人びた踵の高いブーツになって。
放課後は毎日のようにこの部屋を訪れて。
呼び名が変わった。
恭介さんの外見が変わった。
関係が変わった。
頭を支える手に力を込めて拘束する恭介さんに、思う。
(別に逃げないのに)
恭介さんがキスしたいなら協力するのに。
これ見よがしに流し目を寄越すから、荒い息で背伸びをした。
……女子高生と大人なんて、あまりいい顔をされないかもしれない。
でも、この関係が、私たちにしか分からない理由で構わないから、叶うならずっと続けばいい。
――あなたに捧げるは、不機嫌な口付け。
改めてしたキスは、やっぱり煙草の味がほとんどしなくて。
もしかして、初めの頃に提示した好きな人の条件を本当に全部守るつもりかと、甘ったるいことを考えた。
Fin.