あなたに捧げる不機嫌な口付け
答えは、


「今日がバレンタインだからで、私が恭介さんを好きだからでしょ」


当たった? と見上げたら、なぜか混乱している恭介さん。


「何、どうしたの」

「いや、えっと……半丸?」

「は?」


え、なんで。半丸って、バレンタインだからと好きだからのどっちが分からなかったの。


街を見てもカレンダーを見てもバレンタインなのは明白だから、まさか、好きだからっていうのが分からなかったの……?

嘘でしょう。


呆然としていたら、いや、だってさあ、と恭介さんは弁明を始めた。


「今日がバレンタインだからっていうのは、分かったんだけど……」


普段はハキハキ話すくせに間延びした語尾なのは、何かあるからだと、そう相場が決まっている。


相手を煙に巻くためとか、困っているからとか、いろいろ考えられるけど、今回はきっと後ろめたいからだ。


……多分、絶対、私が好きだからっていうと思わなかったんだね。うん。


大丈夫大丈夫、分かってる、すごくショックだけど分かってる大丈夫きっとそうでしょ。


詰まった恭介さんを、早く言って、と目で急かす。


観念したように、恭介さんはゆっくりと口を割った。
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