あなたに捧げる不機嫌な口付け
「俺さ、高校生の祐里恵が好きだよ」


……これは。

この、ひょっとすると引かれかねない変態発言は。


もしかして私に、「無理はしないで」と言っているのだろうか。


「…………」


唇を噛む。

多分当たりだ。


恭介さんはいとも簡単に、私のふらつく踵を下ろさせる。


自惚れないで。そこで軽く笑わないで。

私を甘やかすなんてずるい。


ずるい。


可愛くなくても別にいいだなんてことは、決して言わないのに。


「それにね」


一つ二つ、落とすみたいに、恭介さんはぽつりぽつりと話をした。


「……うん」

「祐里恵は知らないだろうけどさ」

「何」

「お店とかで会計するじゃん?」


途切れ途切れの話を促すように、小さく相槌を打ち続けた。そうでもしないとやめてしまいそうだったから。


毎回のようにさあ、と続けたその話によれば。


離れたところで待つ私を見た店員さんに、「彼女さんですか? お綺麗な方ですね」って言われるので、図々しくも「ありがとうございます」と返しているらしい。


「……それ、リップサービスだから。接客してくれてるだけだから」


恥ずかしいから真剣にやめて欲しい。本当に。


思わず突っ込みを入れた私に、恭介さんが頬を緩めて言った。
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