あなたに捧げる不機嫌な口付け
外から見かけても分かった通り、店内はバレンタイン一色で、綺麗に箱詰めされたチョコたちがぐるりと周囲を一周している。


あまり高価なものにするのも躊躇われて、値札のゼロの数が多くない棚を重点的に見てみた。


うーん、正直恭介さんの好みは全くもって把握していないので、どれがいいか全然分からない。ごめん。


いいや、と丸投げする。


「ほら、早く選んで。どれ」

「え、目の前で買っちゃう?」


恭介さんが不満たらたら唇を尖らせる。


「手作りじゃないの?」

「は?」


何を言っているんだ、この人は。


なんで私が作らなきゃいけないの。わざわざお店に入った意味ないでしょ。

作るのなんて嫌だよ、面倒臭い。


「作りません」


私は料理が壊滅的に下手、ではないと思うけど、ものすごく上手くもない。


大抵は買うかもらうかだからお菓子作りはあまりしないので、確実に美味しい方があげる側としては安心なのだ。


プロが作った方がずっと美味しいに決まっている。
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