あなたに捧げる不機嫌な口付け
私は小さい頃から青が好きだ。対極に、両親、特に母は古風な人だった。


女の子はピンク、と常々主張していたから、他の子が好むような色合いのものを当時はたくさん持っていた。


諦めて周りに合わせて使っていたけど、全然似合っていなかった。

可愛いね、なんてお世辞がお世辞だと、幼心に思うくらいには。


写真に収められてしまって、アルバムに記録がたくさん残っている。


今でも笑い話にできそうもなくて、もう長い間触れられないままだ。


恭介さんが勧めたピンクはとても女の子らしくてフェミニンで可愛くて、まさに女子だな、という感じで。


……そんな色なんて似合わない。


レース柄も、薄桃色とか淡い黄色とか、女の子の象徴みたいな明るい色も似合わないのは仕方ない事実で、私の持つ雰囲気が元来、あまり可愛らしくないからだけど。

それでもおそらく、どんなに可愛い私だったとしても、私はあのとき青を選んだに違いない。


好きな色で、似合う色で、何より——埋められない年の差と、身長差とを埋めたくて。


濃い色は私を武装するから。

大人のように、錯覚させてくれるから。
< 253 / 276 >

この作品をシェア

pagetop