あなたに捧げる不機嫌な口付け
でも、恭介さんが急に甘える理由が分からない。


私が弱っていたから、恭介さんも弱いところを見せてくれたのだろうか。


こう考えると、恭介さんの弱点は私、というとんでもなく胸焼けしそうな結論になるんだけど。


……うーん。もしそうだったら照れくさいなあ。


想像して、あんまり気恥ずかしくて視線が下がる。


それをどう受け取ったのか。


「祐里恵」

「うん」


考え込む私を見据えて、恭介さんは少し低い声を出した。


「お返しかなとかちょっと思っただろ、今」

「……うん」

「怒るよ」


しかめっ面の恭介さんの目に、揺れる子どもが映っている。


「……ごめん」


導き出した結論はともかく、お返しだって思ったのが失礼だってことかな。


よく分からないなりに謝った私に、苦笑に付随して答えをくれる。


「俺の行動全部に理由を探さないで、祐里恵」

「っ」


ああ、そうか。全然違った。


……そうか。
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