あなたに捧げる不機嫌な口付け
「それはそうだろ」
ああ、苛立つ。
……慰めなんていらないのに。
慰めが必要だと思われるようなひどい顔をきっとしていて、どんなに頑張ってもこれ以上笑えそうにないから、苛立つ。
「俺だって八方美人だし、祐里恵だって八方美人だ」
「……諏訪さんのは度合いが違うでしょう」
「そうかもしれないけど、でもどっちにしたって、八方美人なのは別に悪いことじゃない」
可愛げなく皮肉を言ってみたけど、怒る気はないらしい。
「八方美人な面を持ってない人間なんかこの世に何人いる?」
ただの処世術だろ。あの状況の祐里恵ならなおさらだ。
八方美人じゃなくてあれは気遣いだよ。
「八方美人でも八方美人じゃなくても、俺が気遣いだって感じたら気遣いだから、気遣いでいいじゃんか」
諏訪さんはひどく真面目に笑顔を作った。
説得力を持たせるためだろうか。久しぶりのまともな微笑みだった。
「気遣いができない人より、気遣いができる人の方がいいに決まってる」
そんなことは知っている。
ただ、どう取られるかという柵があるのが問題なのだ。
「祐里恵は気遣いができる、いい人だよ」
「眼科を勧めようか」
否定は弱腰になった。
「ひどいな、祐里恵」
口端に笑みを浮かべる諏訪さんに、強く眉を寄せて、黙って俯く。
……ああ。これだから。
ああ、苛立つ。
……慰めなんていらないのに。
慰めが必要だと思われるようなひどい顔をきっとしていて、どんなに頑張ってもこれ以上笑えそうにないから、苛立つ。
「俺だって八方美人だし、祐里恵だって八方美人だ」
「……諏訪さんのは度合いが違うでしょう」
「そうかもしれないけど、でもどっちにしたって、八方美人なのは別に悪いことじゃない」
可愛げなく皮肉を言ってみたけど、怒る気はないらしい。
「八方美人な面を持ってない人間なんかこの世に何人いる?」
ただの処世術だろ。あの状況の祐里恵ならなおさらだ。
八方美人じゃなくてあれは気遣いだよ。
「八方美人でも八方美人じゃなくても、俺が気遣いだって感じたら気遣いだから、気遣いでいいじゃんか」
諏訪さんはひどく真面目に笑顔を作った。
説得力を持たせるためだろうか。久しぶりのまともな微笑みだった。
「気遣いができない人より、気遣いができる人の方がいいに決まってる」
そんなことは知っている。
ただ、どう取られるかという柵があるのが問題なのだ。
「祐里恵は気遣いができる、いい人だよ」
「眼科を勧めようか」
否定は弱腰になった。
「ひどいな、祐里恵」
口端に笑みを浮かべる諏訪さんに、強く眉を寄せて、黙って俯く。
……ああ。これだから。