あなたに捧げる不機嫌な口付け
「祐里恵、今日はごちそうさま。ありがとね」
送るよ、と。
例のごとく玄関を開けた諏訪さんに、どうもありがとう、と素っ気なくお礼を言うと、私が逃げられない距離と場所で何かを取り出した。
こういう無駄な周到さが嫌いだ。
囲んで囲んで、逃げられないように。
断れないように。
そんなふうに渡されたって嬉しくはないし、そんなふうに渡す必要があるものは絶対いいものじゃない。
「はいこれ、お土産に」
「いらない」
予想通りの結果に恨めしく目を細めつつ、首を振る。
お土産? 笑わせる。
今まで一度もお土産なんて持たせなかった人が、今さら何を言うの。
お土産だなんて誤魔化さないで、押しつけたいと断言したらいいじゃないか。
そうしたら、ちゃんとお礼を言って受け取るのに。
「もらってよ。シュークリームのお礼」
「いらない」
ここでこのお土産というかお礼というか、を受け取ってしまったら、これから先、私は諏訪さんに何も渡せない。
お返しが欲しくて買ったんじゃない、とは、あまりに子どもじみていて言いたくなかった。
送るよ、と。
例のごとく玄関を開けた諏訪さんに、どうもありがとう、と素っ気なくお礼を言うと、私が逃げられない距離と場所で何かを取り出した。
こういう無駄な周到さが嫌いだ。
囲んで囲んで、逃げられないように。
断れないように。
そんなふうに渡されたって嬉しくはないし、そんなふうに渡す必要があるものは絶対いいものじゃない。
「はいこれ、お土産に」
「いらない」
予想通りの結果に恨めしく目を細めつつ、首を振る。
お土産? 笑わせる。
今まで一度もお土産なんて持たせなかった人が、今さら何を言うの。
お土産だなんて誤魔化さないで、押しつけたいと断言したらいいじゃないか。
そうしたら、ちゃんとお礼を言って受け取るのに。
「もらってよ。シュークリームのお礼」
「いらない」
ここでこのお土産というかお礼というか、を受け取ってしまったら、これから先、私は諏訪さんに何も渡せない。
お返しが欲しくて買ったんじゃない、とは、あまりに子どもじみていて言いたくなかった。