あなたに捧げる不機嫌な口付け
お互いに無償で贈り物をするには少々冷えすぎているし、割り切りすぎてもいるこの関係を崩したくない。


お返しを無心していると取られるには充分な仲だ。


少なくとも、私はそういうつもりで話している。


どちらかがお返しをやめたときは、無償で何かをもらうことを許されたとき。


好きでもないのに、……甘受なんか、するものか。


もらってばかりでも、あげてばかりでもよくない。


もらったらお返しをする。それで対等。それでおしまい。


私は頑なにお返しして、諏訪さんが面倒臭がってもお返しを催促する必要がある。


だからこそ、諏訪さんは私に合わせた。


「……祐里恵。これは下心満載だから、安心して受け取って」


諏訪さんは、大丈夫だよ、とは言わなかったけど、きっとそんなような意味だ。


出されたのは妥協案で。


諏訪さんの下心は、安くて薄っぺらくて移り気に違いない。


「……いただくよ。ありがとう」


そうなるように狙ったので、当然、あしらいの上手さは特に私を駆り立てなかった。


常に行動しやすく保たないと、諏訪さんにそのうち足元を掬われてしまう。


対等でいるのはとても難しくて、どうしようか足掻くのはとても楽しい。


……紙袋を受け取りながら、考える。


この人を相手取るのなら。


足払いとはいかないまでも、せめてつまづかせるくらいは頑張りたい。
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