あなたに捧げる不機嫌な口付け
金銭感覚の緩さにだんだん傍観していられなくなってきて、一旦待ったをかける。


「諏訪さん、いいよ。私は紅茶も好きだよ。そんなコーヒーミルまで買わなくても」

「祐里恵が来やすい方が大事」

「…………」


計画性……ある、よね?

大丈夫だといいなあ、この人。


「コーヒー飲めないからって足が遠退くとか悲しいじゃん」

「別に遠退かない」


むしろそういう台詞が被害を出す。


砂糖にまみれた台詞はもっと女性らしい人に吐いておけばいいのに。


紅茶を飲み終わると、カヌレもまだ出てきていないというのに、諏訪さんは立ち上がって私を促した。


「いいから。一緒に買いに行こ」

「行かない」

「うん。行こう」


拒否は黙殺される。


つまりさ、と諏訪さんはよく分からない接続をした。


溜め息を吐いた私に目線を合わせて笑う、その朗らかさが鼻につく。


「祐里恵がもっとずっと一緒にいてくれたら、それでいいんだよ」


彼は平気でうそぶいた。
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