あなたに捧げる不機嫌な口付け
諏訪さんの家から二キロほど離れた場所に、大きなショッピングモールがある。


基本買い物はそこで済ませるというので、案内を任せて向かった。


電化製品は重いので、一旦先に細々した買い物を済ませてしまおうと道中決めていた。


買っても軽いものばかりだから先でいいらしい。

鮮度が重要なものでもないし。


「ここ、スーパーだけ二十四時間営業なんだ。すごいね」


看板を見上げて感心しつつ、かごを腕にかける。


「うん、便利だよ」


火曜日は火曜市やってて安いんだよ、と笑いながら、諏訪さんは私の右腕から買い物かごを抜いた。


何も声をかけられなかったので、黙ってそのまま隣を歩く。


……諏訪さんは、持つよ、とか声をかけない辺りが手慣れている。


生憎、私は遠慮しない図々しいやつだから普通に流れてしまったけど。


だって重いの面倒臭い。

持つよ、いいよ、なんてやり取りも面倒臭い。


「祐里恵、何か欲しいのある?」

「特にない」


というか、あってもこの場で買う気はない。


諏訪さんは払う気満々だし、私は買ってもらう気はないし。


「えー、完全に俺の買い物に付き合わせちゃうじゃん。ごめん」

「いや、コーヒーミルは私の買い物みたいなものだから」


細々した日用品を揃えて、お菓子や乾麺なんかもいろいろ買って、お会計を済ませたレジ袋は諏訪さんの手の中だ。
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