あなたに捧げる不機嫌な口付け
「協力関係でしょ」


それ以上でもそれ以下でも、それ以外でもない。


そうだねとあっさり認めたのに、諏訪さんはよく分からない思考で意味不明なことを言った。


「協力関係なら恋人と同じじゃん」


どこがだ。


「全然違うと思うけど」

「同じだよ。恋人ってのは協力関係の別称だろ」


確かに、二人の関係を円満にするにはお互いの協力は欠かせない。


でも、諏訪さんの説明では納得できなかった。


相手を無条件に思いやれるのは少数だけだ。


相手が自分を好きで、自分も相手が好きだからこそ、協力して築く円滑な恋人関係というのは成り立つように思う。


その前提が崩れていると、どこか歪だ。


ちょうど私たちのように。


「私たちは恋人なんかじゃないと思う」

「どうして?」


そんなの簡単。


私の中では、協力関係と恋人関係は同じようなものだけど、全く同じじゃないからだ。


「恋人なら、二人とも、少なくとも片方は、相手に対する思いとか熱量とかあるでしょ。私たちにはそんなものないと思う」


相手が好きだとか、大事にしたいとか考えるから、一般にカップルは甘ったるい雰囲気の人たちが多い傾向があるんじゃないか。


大切にしたい思いが透けて他人のこちらにも見えるから、周りはそれに当てられてなんとも言えない気分になる。

そうでしょう。
< 88 / 276 >

この作品をシェア

pagetop