田舎へ行こう! ~彼女の田舎の冬~
うわぁ、きれいだな。

玄関を出た途端、そんな感想が湧いた。

アイスキャンドルというものが置いてあったのだった。

バケツに水を入れて凍らせ、周りが凍った所で中の水を捨てて、空洞になった所にロウソクを入れ火を灯すのだそうだ。

それが10個も置いてあった。

「素敵でしょう!雪国ならではの楽しみ方だよねえ。

あ、ほら、キツネが来たよ。」

「え、どこ?」

示された方を見ると、中型犬位のキツネが歩いていた。大した警戒もしなく、手を伸ばせば触る事が出来そうだった。

「触ったら駄目だよ。
野性動物だし、病気も怖いからね。」

人間の前を足取り軽く、悠々と歩いていく。

ここは、自然と上手く折り合って生きる場所なんだなと感じられた。




どの位見ていたのだろうか。
奈央先輩の、冷えるから入ろうとの呼び掛けで我にかえる。

雄大な自然のちっぽけな自分を感じ、心が洗われた気がした。

明日には帰途に付き、ゴチャゴチャした街中での生活が始まる。

俺は時々、この自然を感じに来たくなるんだろうなという予感がしていた。
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