王子様たちのシンデレラ(仮)
「ごめんね彩羽ちゃん、柏木さんと話してた?」




「いえ、気にしないでください!」




「そう?あのねえ、今日急にヘアメイクが1人来れなくなっちゃったの。だから直前になったら呼ぶから、彩羽ちゃんにも手伝ってもらっていいかな?」




「……っ!!いいんですか!?」




「もちろん。それに、いい経験になると思うよ?」




「ありがとうございます!!」




あたしは深くお辞儀をした。


憧れのヘアメイクを体験できる。それだけであたしはうれしくて仕方がない。




「じゃあまたあとでね?」




「はい!」




あたしはもう一度お辞儀してヘアメイクさんと別れ、アユが言ってた二階席を目指して会場内を駆け抜けた。




「おせえよ彩羽」




「すいません。でもアユ、ここ禁煙です」




「ちょっとぐらい大目に見てよ彩羽ちん。朝4時から車の運転させられたこっちの気持ちにもなってみろって」




あたしはタバコを吸い続けるアユをにらんだ。




一応ホール内ではないけど、この会場は喫煙室以外は敷地内すべて禁煙。




「……大人げない」




ぽつりとつぶやいてみたけど、アユはふっと笑って空を見上げた。




「あ、そーだそーだ。麗と美玲、11時には着くってよ」




「あ!!今日朝のREDに Midnight wolf 出る日じゃん!!見ないと!!録画し忘れた!!」




あたしは慌ててスマホをポケットから出す。REDというのは朝の情報番組で、7時からのコーナーでエンタメ情報やアーティストへの取材が放送されるんだよね。


今日はそのコーナーで Midnight Wolf がスタジオで生歌披露する。




「そんなんダビングしてやるって」




「ほんと!?アユ~!神様~!」




「あげるかどうかは今日のお前の働き次第だけどな。」




「え!?が、頑張ります……」

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