王子様たちのシンデレラ(仮)
「アユ、信号変わった。しっかり前見ろよバカ」




「美玲、お前、その発言が外部に漏れたら大変なことになるぞお前」




たしかに、芸能界や世間では「可愛い猫系女子」で通っている元ティーン雑誌の専属モデルの美玲ちゃん。



こんなに暴言を吐く子には見えなかった……




「外部に漏れないようにしっかり裏表使い分けてるから安心してよ」




「ゲスいなお前!!!」




「あ!!アユ、テレビ局見えてきた!!」




「あ?あぁ……」




あたしが身を乗り出してアユの司会の先に見えるテレビ局を指さすと、アユもそっちを見た。




「陽太!!陽太ってば……ひーなーたー!!」




思いきりでっかい体をバシバシ叩いてやると、陽太は眉間にしわを寄せてからゆっくり瞼を開いた。



「あ゛?」




「……その態度、起こしてくれた人に対する態度?」



「……はぁ」




疲れてるのかも知れないけどさ、酷くない!?




「おい」




「なに」




「置いてくぞ」




「むかっつくなぁ!!起こさなきゃよかった!!」




「うるせえな、はやくしろよ」




陽太は車から降りて少し離れたところで立っている。



「……」




「なんだよ?」



「ふふっ、べつにぃ?」




「はぁ?」




‟置いてくぞ” とか言っといて、あたしの荷物までもって待っててくれるんだね?




「行くぞ」




「待ってよ陽太!!」




やっぱり根は、噂通りの優しい王子様なのかな?

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