捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
こんな森の奥に別荘なんて……と少し怪訝に思うが、続けてランスは語る。
「とはいっても、いくつかあるうちのひとつ。ここは私が一番好きな場所であり、私たちアーチャー家の思い出の場所でもあるんだ」
「思い出の場所?」
「そう。ここは死んだ私の母が幼少期の頃によく訪れていた場所でね。私も小さい頃連れられて遊んでいた記憶がある。母が病気に伏せた頃、父が母の思い出であるこの場所に屋敷を建て、私に爵位を譲って以降、母が亡くなるまでここで住んでいたんだ。ひっそりと、けれどふたりで過ごす残された時間を大事に確かめ合うようにね。……もうかれこれ十年も前の話になるか」
話しながら湖の前まで歩くと、そこに広がる緑茂る地面にランスは腰を下ろした。
水面は陽の光で宝石のように輝き、風に揺れて形を変える。
私もランスの隣に座って、静かにその光景を眺めた。
穏やかな時間の流れ。
屋敷の中で過ごすものとはまた違った感覚だ。
不思議と心が落ち着いて、もやもやとした思いもこの澄んだ水面を眺めていると、少しずつ晴れていくよう。
ランスもまた、ただ静かに目の前に広がる湖を眺めている。
亡くなったお母様のことを思いだしているのだろうか。
それを考えると、心が締めつけられた。
「とはいっても、いくつかあるうちのひとつ。ここは私が一番好きな場所であり、私たちアーチャー家の思い出の場所でもあるんだ」
「思い出の場所?」
「そう。ここは死んだ私の母が幼少期の頃によく訪れていた場所でね。私も小さい頃連れられて遊んでいた記憶がある。母が病気に伏せた頃、父が母の思い出であるこの場所に屋敷を建て、私に爵位を譲って以降、母が亡くなるまでここで住んでいたんだ。ひっそりと、けれどふたりで過ごす残された時間を大事に確かめ合うようにね。……もうかれこれ十年も前の話になるか」
話しながら湖の前まで歩くと、そこに広がる緑茂る地面にランスは腰を下ろした。
水面は陽の光で宝石のように輝き、風に揺れて形を変える。
私もランスの隣に座って、静かにその光景を眺めた。
穏やかな時間の流れ。
屋敷の中で過ごすものとはまた違った感覚だ。
不思議と心が落ち着いて、もやもやとした思いもこの澄んだ水面を眺めていると、少しずつ晴れていくよう。
ランスもまた、ただ静かに目の前に広がる湖を眺めている。
亡くなったお母様のことを思いだしているのだろうか。
それを考えると、心が締めつけられた。