捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
普段はあまり感情を露わにさせないランスも、この時ばかりは悲痛な面持ちを浮かべていた。

きっと自分の手で散らした命に対してのやるせない思いがあるのだろう。

名声の陰には恐ろしいほどの犠牲がある。


国を守るために、人を殺めなければならない。

それはこの国に生まれ、騎士として生きている以上避けられないもの。


ランスはその苦しい思いを抱えて、今を生きていた。


「……ごめんなさい、ランス。嫌なことを思い出させてしまったわね」

「別に構わないさ。たまにはこうやって話すのも、贖罪のひとつだからな」


無言で食を進める。

この時間に聞く話ではなかったと、後悔してしまった。

とっくに食欲は消え失せ、無理矢理飲み込むのがやっとなほどだ。


頭の中ではランスの悲痛な表情がこびりついて離れない。

思い浮かぶたび、胸が締めつけられるように痛くて仕方なかった。


ランスはそんな思いを抱えたままで、それでも国のために命を賭ける。

強く、そして優しき騎士なんだ。



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