捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
馬車の中は静かで、歯車の回る音だけが響いていた。
ランスは窓から流れる景色を見つめている。
私は目線を下に向け、気持ちを落ち着けようとしていた。
しかし、城に近付くにつれて私の緊張は増していく。
膝元に重ねて置いていた手に、自然と力が篭っていった。
「……不安か?」
そんな私に気が付いたのか、ランスはそう声を掛けてくれる。
顔を上げると、私をじっと見据えるランスの顔があった。
「……ええ、少し」
「大丈夫だ。そんなに気に病むことはない」
ぐっと固く握られた私の手を包むように、ランスの手が重なる。
冷たくなっていた私の手には、そのランスの温もりが熱いと感じるほどだった。
それと共に私の鼓動も早さを増し、いつしか触れられることに抵抗がなくなっていた。
それどころか、こうやってランスの体温を感じられることが心地よいと思ってしまう自分がいる。
私が特別な状況に置かれているからだろうか。
それとも……?
「冷えているな。着くまで握っていよう」
「ありがとう、ランス」