捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
やがて馬車は徐々にその速さを緩めていく。

どうやら城へと着いたようだ。


完全に動きが止まると、外から御者のひとりが扉を開ける。

そのときやけに外が眩しく感じて、思わず目を顰めた。


ランスが先に降りると、私の手を取って降りるようにと促す。

震えておぼつかない足をなんとか堪えて、それに従った。


重厚な城の扉が、門番によって開かれる。


開かれた先には広いエントランス。

左右に伸びた廊下には、幾重の部屋の扉。


そして、視線の先にはいつも夜会が行われている大広間の扉がある。


あの夜会以来、城へは訪れていない。


――約一年。

目に映る城の中の光景は、特別変わってはいなかった。

しかし、あのときと違うことがひとつ。

夜会へ訪れる煌びやかな貴族たちの姿やざわめきは、どこにもない。


決まった位置に起立正しく騎士、たまに通り過ぎる侍女だけ。


これが城の中の、本来の姿なのだろう。

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