捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「アリシア、こっちだ」
その声も、城の中では大きいと感じるくらいに響く。
私はランスの後をついて、ベルフォンヌ様の待つ部屋へと歩いた。
やがて並んだ部屋の扉の中でも、ひと回りほど大きな扉の前でランスの足が止まった。
――そこは、接見の間。
国王やその家族に呼ばれた者しか入ることの許されない、特別な場所。
その扉の横にも騎士がひとり立っていて、ランスの姿を見るなり、一礼をした。
「アリシア=ネリベル嬢をお連れした。開けてくれ」
「はっ、只今」
扉がゆっくりと開かれる。
ランスは躊躇うことなく部屋へと入っていくが、私はどうしても足がいうことを聞かず、一歩を踏み出せない。
その場で立ち尽くしてしまう私にランスは気付くと、立ち止まって優しく声を掛けた。
「おいで、アリシア。大丈夫だから」
そう言われてゆっくりと一歩、前へと踏み出す。
ドクン、ドクン、と心臓がうるさいくらいに鳴り響いていた。