捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
前に行くようにと促され、ベルフォンヌ様の近くまで寄ると、私はドレスの裾を持ち、深く一礼をしながら挨拶をした。
「お初にお目にかかります、王女様。私、ネリベル伯爵家の長女アリシアと申します。このような機会を与えて頂き、とても光栄です」
「ええ、あなたの名前は前々から良く知っているわ。顔を上げて、アリシア。……ああ、そう。ランスロット、私は女だけでの話をしたいの。悪いけれど部屋から出て貰えるかしら?」
その言葉に私は驚いて頭を上げた。
それはランスもまた同じだったようだ。
どうやら、私とベルフォンヌ様ふたりきりになるとは思っていなかったのだろう、そう言われてランスは言葉に詰まる。
「そ、それは。例の話であるならば私が同席しても問題ないはずでは」
「ったく、乙女心が分からない男ね。あなたがいては腹を割って話せないこともあるでしょう。これは命令よ、早く出ていって」
物怖じせずキッパリと言うベルフォンヌ様に、私は呆気に取られる。
ランスは心配そうに私に視線を向けた。
けれど、私にはどうすることもできず、ランスから目線をずらし、俯くだけしかできない。
ランスが言わんとしていることは、その表情だけでも痛いくらいに分かった。
でも、これはベルフォンヌ様の命令。
伯爵令嬢の私がどうこうできるものではない。
ランスは少し苦虫を噛んだような表情を浮かべていたが、渋々一礼をすると部屋を出ていった。