捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
8王女様との密談
まるで身体全体が心臓になってしまったかのように、ドクドクと身体を小刻みに律動させる。
辺りの音はまったく私の耳には入ってはこない。
自分自身の鼓動だけがやけにうるさく感じるだけだ。
認めるも認めないも、私とランスはまだ正式に婚約してはいない。
それ以前に、私はいかにどうやってこの話をなしにしようかと、考えあぐねていた身でもある。
だからベルフォンヌ様の言葉は、ランスとの結婚をしたくないと考えていた私にとって、願ったり叶ったりのもののはずだった。
その言葉を受け入れればいいだけ。
『かしこまりました、王女様の仰せの通りに』と言えばいいだけ。
そうすれば、またいつもの生活に戻れる。
……なのにどうしてだろう。
思った以上にその言葉に堪えている自分がいた。
胸が痛い。
キリキリと頭も痛み出す。
自分の思い通りになる展開なはずなのに、ベルフォンヌ様の言葉に対しての返答を発することができなくなっていた。
ベルフォンヌ様は、そんな私を睨むようにただ見つめている。
……受け入れなくては。
なにか言葉を……!!
カタカタと歯音を立て、口を開きかけた瞬間、ベルフォンヌ様の表情が緩んだ。